契約トラブルがあれば、宅建士は責任を取らされる【体験談アリ】

契約トラブルがあれば、宅建士は責任を取らされる【体験談アリ】 宅建士資格の活かし方

宅地建物取引士試験に合格し不動産業者に就職した場合に、宅建士としての仕事と言えば「重要事項の説明」だと思います。

宅建士は取引があるごとにお客さんに重要事項を説明し、重要事項説明書に記名押印します。当然のようにこの作業をしますし、件数をこなすと流れ作業のようにこの仕事をこなしてしまいますが、実はこの宅建士の仕事は責任重大な仕事なのです。

重要事項説明書の記載ミスがあれば宅建士の責任

重要事項説明書の記載ミスがあれば宅建士の責任

重要事項説明書に記名押印するということは、「この重要事項説明書は宅地建物取引士である私が確認しました」という意思表示です。ですのでその書類の中に記載ミスがあれば、一番に責任を問われるのは宅建士です。

不動産取引でトラブルがあったときに責任を追及されやすいのも宅建士です。

担当ではない案件で責任を追及される

不動産業者に宅建を持っていない不動産営業マンもたくさんいます。ですので、重要事項説明は当然そんな宅建を持たない他の営業マンが担当している契約もしないといけません

そしてその重要事項説明書にハンコを押すのは、会社のハンコと宅建士のハンコだけで担当者は全くハンコを押さないのです。

もしその案件でトラブルがあった場合にまず責任を追及されるのは、ハンコをおしている会社と宅建士です。宅建士に関しては資格のはく奪、ひどい場合は詐欺や損害賠償請求など民事裁判や刑事での捜査の対象になったりします。

素人宅建士に責任をなすりつける

不法な取引だけ素人宅建士にハンコを押させるという場合もあります

業界経験の長い宅建士ではハンコを押したがらない案件でも、経験の浅い宅建士では危険性がわからないのでハンコを押させることができるので、そういった素人宅建士を雇って不法な取引を進める不動産業者もいるのです。

ヤフー知恵袋でもそういった経験を相談されている方もいらっしゃいます。この方の場合は「宅地でない土地」を「宅地」として売買する取引の重説を担当したそうで・・・。

人を信用するのは大切ですが、土地の謄本くらいは確認したほうが良かったかもしれないですね。それかわかっていても断れなかったか。

完璧な重説を作り続けるのは実務上難しい

完璧な重説を作り続けるのは実務上難しい

宅建士の責任は重大ならば、いつも問題ない重説を作り、違法そうな案件にはハンコを押さなければいいじゃない、と思うかもしれませんが、完璧な重要事項説明書をすべての案件で作り続けるのは実務上難しいと言えます。

自分の担当じゃない取引の重説はミスだらけ

先ほど説明したように自分の担当案件ではない取引の場合は、重説作成に欠かせない物件調査などを取引の担当者がする場合がほとんどで、宅建士はその調査書をみて重説を作るだけの場合が多いです。

もし調査ミスがあったり担当者が意図的に調査内容を改ざんしていても気づくことができないかもしれません。

さらに他人の担当の取引の重説をしても普通給料はそれほどもらえません。不動産業者で勤務するとそうなっていくのですが、そんな仕事は全くやる気がせず適当になりがちなのでミスも多発します。

その会社の独自ルールを本当のルールと誤認している

よくあるのが小規模の不動産業者に宅建士として就職して、その会社で教えてもらった重説の書き方を正式な書き方と間違えているということです。

そんなことないでしょう。と思う方も多いと思いますが、これが普通にあります。

本当は必須で記入しないといけない内容を省略していたり、保証などの責任を会社が持たないといけないところを勝手に免責にしていたりと、様々なケースがあります。

そういった部分も先ほど説明したように重要事項説明書に記名押印する宅建士にも当然責任追及されるところです。

不安なときは協会に作った重説を見てもらいましょう。すごいダメ出しされます。あと大手の不動産業者との取引の時に相手の営業マンと会話したりして自分の書類のおかしなところに気づかされることもあるでしょう。

法改正などの規定の変更についていけない

重要事項説明書を作る時、実際にはどうするかというと、作り始める案件に似ている以前あった取引の重説を探してきてそれを変更する形で作り始めることが多いでしょう。

すべて一から始めるとほぼすべての契約で同じ内容のところをもう一度書かないといけないので面倒だからです。

ですがこれをしていると最近の法改正に則っていない重説が延々と作られ続けるので注意が必要です。重説に記載しないといけない事項もときどき増えたりするので、気づいた時にはすごく時代遅れの問題のある重説を作っているということもあります。

これも不動産協会の会員ページで最新の重説の雛形をダウンロードできたり、協会の定期研修で教えてくれたりするのでこういったものを使って情報をアップロードしていく必要があります。

大手不動産業者では会社の上層部から通達が来たり、重説作成ソフトが最新の法改正の通りに書かないとエラーが出たりするようになるのでこの部分は大丈夫な場合が多いです

【実話】宅建士の責任について、社長ともめた話

【実話】宅建士の責任について、社長ともめた話

私も以前の勤め先で前述したヤフー知恵袋の方のような詐欺的な取引の重説担当を任されたことがあります。

自社所有の土地を仲介しようとする

私の場合は、土地は自社所有・建物は建築業者所有の完成済み建売物件について、建売として土地建物を仲介し仲介手数料ももらうという取引でした。社長の担当案件でした。

当然土地については自社のものなので「売主」です。仲介はできないのですが、

  • お客さんが仲介手数料を払うことで納得している
  • 仲介手数料を取らないと赤字
  • 土地も建築業者に売る「口約束」をしていた

などと意味不明なことを言って、土地と建物が建築業者所有であるとして、自社で仲介に入る契約を結ぶと言い張っていました。法的には全然正しくない話の連続だったので取り合えず、

  • 協会に確認とって協会が「良い」って言ったらやればいい
  • 「ダメ」なら重説担当はやらないです
  • 確認してダメでも○○さんに重説頼めばいいじゃないですか

と別の営業所に勤める別の宅建士をいけにえに捧げました。

結局協会は宅建業法違反になるのでその取引はやめてください。と言ったそうで、私にも連絡があり「絶対にやらせないようにお願いしますよ」と念をおされましたが、取引は別の素人宅建士によって決行されていました。

モノ言う宅建士は嫌われる場合もある

しかし当然これだけ社長に意見したので、嫌われたことは言うまでもありません

私とこの社長の場合はある程度付き合いも長く、この程度の苦言や口論は何度かあったので直後に辞めるという事でもありませんでしたが、通常はものすごい嫌がらせが始まってもおかしくない出来事だと思います。

逆にこの社長との関係性のような人間関係ができていない状態の上司と部下であれば、「面倒なことになるのも嫌やし、何も言わずに話を進めるか」と違法な取引の重説に記名押印していたかもしれません。

「法律勉強したほうがいいですよ」とか社長を煽り過ぎた私も悪いですが、1年後に会社を辞めることになりました(笑)

中小の不動産業者で宅建士として働く場合は気を付けて

中小の不動産業者で宅建士として働く場合は気を付けて

このように宅建士として不動産業者で勤める場合も、宅建士として責任を取らされる場合があることには気を付けておかないといけません。

特に中小の不動産業者で働く場合は、

  • ちゃんと宅建士の仕事を教えられる人がいない
  • その会社の独自ルールで運用されている場合がある
  • 利益のために無茶な取引も決行する

というようなことが多く、必然的に宅建士としての責任を問われるトラブルにあう確率も高くなります。

逆に大手不動産業者ではそんな社員を放置しておくと全国のどこかの店舗で違法取引が行われるだけで、全店免許取り消しになったりするので、そういうことがしにくい取り組みがあります。

社員教育制度であったり、重要事項説明書などの書類を本部でチェックする制度・抜き打ち事務所チェックなどがあります。そういうところで宅建士として勤める場合は安心ですし、ちゃんとした宅建士の仕事も学ぶことができます。

適当ですが、友達や家族に会社名を言って半分くらい知ってたり聞いたことがあったら大手って感じで考えていいと思います。

契約トラブルがあれば、宅建士は責任を取らされる【体験談アリ】:まとめ

宅建士は重要事項説明書や契約書に記名押印するので、最終的に取引でトラブルがあれば自分が担当営業マン出なくても責任を追及される可能性が高い

中小の不動産業者では特に気を付けるべき。会社の命令通り違法な契約をすると訴訟リスクをかかえる。楯突くと嫌われて辞める羽目になるのであまり楽しくない。

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